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第4部 学校におけるキャリア教育の実践的推進 ●第4節 専門学校


デュアルシステムを応用した職業分析と自己分析

(職場体験で形成されるキャリアデザイン教育)

新宿情報ビジネス専門学校
学校長 佐古田 正道
主任講師 川原 祥史

1. ねらいと特色

昨今のフリーターやニートの増加・早期離職という現状に対し、企業側からは「入社後に自社で職業人を養成するほどの余力はない」という意見が多数を占める。この相反する現状を鑑み、当校では学校教育から職場へのキャリア形成支援策を模索してきた。在学中の「入職準備期間」ともいえる時期に、将来の方向性を明確にするための導きをいかに行うかということはITビジネス系専門学校の使命であり、学校の職業教育から適職選択へのスムーズな移行を目的としたキャリア探索の支援に集約される。 以前よりドイツで推進されてきたデュアルシステムという職業教育は、「学校と企業との繋がりは在学期間中から既に存在している」というプログラムの下にあった。当校では、その日本版として、平成16年に新制度「産学連携デュアルシステム」を発表した。企業と提携した職場実習を設け、企業側のニーズと訓練生の能力がマッチすれば正規雇用への移行も期待できるものである。これには当然、教育機関・学習者・受け入れ企業の三位一体の協力体制が必須となる。このシステムも本年で4年目に入ったが、これまでの施策の中から特徴のあるものをここで紹介してみたい。

2. 計画と実践

(1) 長期デュアルシステム(1~4年制専門課程の学生対象)

選択講座としてキャリアデザイン講座を週1回(90分)×10週=1単位で実施。職業適性の発見と社会人マナーを身につけさせること、そして職業意識の啓発を目的とする。希望者には、連携先のS社(ソフトウェア開発・販売・アウトソーシング関係企業)で専攻に関するアルバイトの場を提供、学生には「職業分析と自己分析」のワークシートに基づくレポート提出により、職場実習としての単位を認定する。当校の「半日学び半日働く」というコンセプトの下、学費負担の軽減と適職選択の動機付けにも役立っている。

(2) 短期デュアルシステム(国の専門学校等委託訓練の受講生対象)

特別行政法人雇用能力開発機構東京センターからの委託教育事業として、若年者対象のデュアルシステム訓練を実施している。IT・Web・シスアド科という名称で、当校にて3ヶ月間のIT・Web関連の実習訓練と国家資格(初級システムアドミニストレータ)の受験講座、その後の1ヶ月は前述のS社にて職場実習をするものである。業界の生の雰囲気を肌で感じ取る絶好のチャンスといえる。また、この受講者の学費は国が負担することになっており、学習意欲のある人の経済的自立支援にも寄与している。

(3) ライフサイクルを配慮したキャリアデザイン(大学・短大卒の研究科の学生対象)

1年制マルチメディア研究科に所属していた学生の例(短大卒、主婦、幼稚園児の母)。情報技術関連、CG / Webデザイン、ビジネス実務関係科目など一連のカリキュラムを上位の成績で修了した後、卒業前の2ヶ月間を当校における教育実習とした。対象は就職支援委託訓練コースのビジネスリフレッシュ科(初心者クラス高齢者27名)とし、メインの講師の助手として「指導力養成」を主眼とする。本人も将来的には、子育てのかたわらパソコンインストラクタという道を候補に考えていることもあり、上記(1)(2)のケースとは違った意味で女性のライフサイクルを配慮したキャリアデザイン教育と当校本来の事業がうまくマッチした新しい試みといえる。

3. 実践例

前述2-(1)(2)長期・短期デュアルシステムの例

専門学校・学生・企業が互いにチャンスと労働力を提供しあうことによって、図1のようなメリットが生まれている。

前述2-(3)ライフサイクルを配慮したキャリアデザインの例

講師助手としてメインの講師の指導の下、「教える」ということに関しては日々の業務の中で本人なりに悩みながらも順調に業務をこなしていた。この2ヶ月間の実習を通して、実際の業務以外に下記の図2に示す課題を与え、キャリア教育担当講師とも常に連携をはかるようにした。

図1

fig1

図2

開始時 一ヶ月 終了時 (○の時点で提出するものとする。)
課業分析シート 希望の職業分野において、必要とされる課業を5項目選択。  例:「各種提出資料の作成」「作業手順書の作成」    「相談・助言・説明」 等 選択した各項目に、いかなる責任や能力が要求されるかを 5段階で判断。(個人がその課業をどのように見るか。)  例:「知的理解・判断力…3」「手先の機敏さ…4」等。 さらに自分のレベルを分析評価し、達成度を5段階で記入。
自己評価表(人物・能力) 「対人関係」「職務知識」「指導育成力」など10項目につき5段階で自己評価をする。
職場実習での自己評価 職場実習での自己分析と自己評価(不十分:1~十分:5)  例:職業を適切に遂行することができたか。…4    自己理解と職業理解ができたか。…2    適職選択の動機付けができたか。…3 等。
問題解決法 問題発生時に提出。原因追究→解決策→具体的手段の順で当校では実習に限らず採用しているシステム。今回は「質問の対応による時間効率」について問題を提起していた。
職場実習記録 毎週提出。実習勤務時間・主な仕事内容をまとめたもの。これに基づき、キャリア教育担当講師との話し合いを行う。
職業分析の感想 実習期間に学んだことを総合的に整理する。単なる感想や学んだ事項のまとめに終始せず、 「今後の方向性」と「将来へのアクションプラン」を必ず含ませることがポイント。

4. 評価と課題

職場実習の意義は、働く世界を肌で感じ、職業意識へと繋げていくことにある。私たちとしても、学生には身をもって体験し、何らかの「成長」や「感動」が生まれてほしいと考えている。  正解のある試験の類とは違い、この種の試行の結果は必ずしも数字で表れるものではない。何より学生が「どう変わったか」にかかっている。したがって、各種課題内容なども学校側ではなく、学生自身の自己評価に重きを置いている。技術・能力の育成は当然だが、「自分で考え、悩みながら成長すること」こそ、真のエンプロィアビリティ(employability=雇用され得る能力)の形成であり、職業的自立支援の目指すところではないかと考える。  学生たちの不安を丹念に解きほぐしていけるキャリア・カウンセリングの地盤を固めていかなければならないのは私たちの課題である。現行の実習期間が学生の自己探究や企業側の適性評価にふさわしいものかどうかなど、今後の検討課題は多い。

参考

*デュアルシステムを利用した卒業生の声

 

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